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2012年6月18日 (月)

金融商品取引法違反は刑罰が軽い?

 週末の新聞では,AIJ投資顧問の社長に対して,顧客の年金基金から運用資金をだましとっていたとする詐欺容疑で,捜査当局が近々強制捜査に踏み切るようだとの報道がなされていました。

 

 同社社長の国会の証人喚問については,テレビでご覧になった方も多いでしょう。虚偽の運用実績を示して勧誘したか否かが争点になっていたと思います。そして,金融商品取引法違反でも,証券取引等監視委員会(SESC)がすでに強制調査に着手していたはず。

 

 そうすると,金融商品取引法違反と,今回報道されている詐欺容疑の立件とは,いったいどんな関係に立つのか,疑問を持たれる方もいるかと思います。

 

 報道によると,SESCは,契約に関する偽計の疑いで強制調査を行っているとのこと。金商法38条の21号は,金融商品取引業者等は,その行う投資助言…投資運用業に関して,次の掲げる行為をしてはならないと規定しています(…は中略)。

 

 「一 投資顧問契約,投資一任契約…の締結又は解約に関し,偽計を用い,又は暴行若しくは脅迫をする行為」

 

 この規定に違反した場合,金融商品取引業者の代表者等は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金(又は併科)の刑に処せられます。

 

 他方で,詐欺罪は,刑法に規定があり,10年以下の懲役が科せられます。

 

 「なんだぁ,金商法違反の方が軽いのか。」と思われる方が多いかもしれません。抽象的な規定だけを見て刑の軽重を比較するのは必ずしも適切ではないのかもしれませんが,しかし,法定刑の上限が軽すぎるというのは批判されてしかるべきとも思います。

 

 金商法の刑罰規定の問題点は2点あって,一つは,法定刑の上限が軽すぎるのではないかということ。例えば,インサイダー取引でも,5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(又は併科)で,最高刑は詐欺罪より軽いのです。

 

 もう一つの問題点は,どのような行為が犯罪となるのか,不明確な規定が多いことです。今回問題とされている,「投資一任契約の締結に関し,偽計を用いること」についても,確かに「悪い行い」なんだろうとは思いますが,「『偽計』とはいったいなんだろう?」と考えてしまうと,どういう場合に『偽計』にあたるのか,あいまいなんですね。捜査当局としても,こんな条文,使いたくないわけです(しかも詐欺罪より刑が軽い。)。

 

 金商法には,こういうたぐいの規定がいくつかあって,例えば,

 

 「有価証券の売買その他の取引…について不正の手段,計画又は技巧をすること。」

 

 などという条文もあります。これに違反すると,10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金(又は併科)で,金商法違反としては一番法定刑が重い犯罪ですが,「『不正の手段,計画又は技巧』っていったいなに?」ということを考えると,捜査機関としては,この条文の適用に二の足を踏んでしまうわけです。

 

 今回のAIJのケースでは,甚大な被害額や影響にかんがみ,(より刑の重い)詐欺罪の適用に踏み切ったのでしょう。金融商品に関する不公正取引の規制の観点からしても,金商法の刑罰規定,構成要件の内容,刑罰の軽重について,きちんと整理して抜本的な法改正すべき時期に来ていると,考えます。

 

hy

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