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2012年6月 6日 (水)

婚姻費用・養育費の相場?

 

厚生労働省が公表している,「平成21年度離婚に関する統計」によれば,平成20年の離婚件数は251千件。この数字は,平成15年以降減少に転じてはいるものの,昭和50年代と比べると約2倍という高い数字です。ニュース風に言えば,約2分に1件,離婚が発生しているというわけ。

 

この離婚総数のうち,協議離婚が87.8%,裁判離婚が12.2%とされています。「協議離婚」というのは,当事者が話し合って合意して離婚届を出すもの,「裁判離婚」というのは,裁判所が関与して成立する離婚のことであって,調停離婚や判決離婚などをまとめたものです。 

 

そうすると,平成20年においては,3万件以上の離婚事件が裁判所に持ち込まれている計算になります。 

 

離婚事件においては,離婚原因の有無をそもそも争っているというものも多いと思いますが,条件次第では離婚もやむなしと当事者が考えているものも実際上は多い。ここで「条件」とは,金銭的解決,つまり,慰謝料・財産分与・養育費などといわれるものです。ワイドショーなんかでは,有名芸能人やプロスポーツ選手の離婚で慰謝料が○億円,などと取り上げられたりしますが,やはり気になってしまいますよね。 

 

慰謝料や財産分与の額は,個々のケースに依存する性質がありますが,養育費・婚姻費用については,一定の相場がありますので,今日はこれを簡単に説明しましょう。なお,「養育費」というのは,親が子の監護をしたときその監護にかかる費用のこと,「婚姻費用」というのは,夫婦がともに分担しなければならない婚姻から生ずる費用(養育費も含まれる。)のことです。 

 

判例タイムズという法律雑誌の1111号(200341日号)の285頁以下に,「簡易迅速な養育費等の算定をめざして―養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案―」という論稿が掲載されています(なお,1114号に一部訂正記事があります。)。著者は,東京・大阪養育費等研究会とされていて,6人の裁判官と2人の家裁調査官が名を連ねています。これはどういうものかというと, 

 

「夫婦の年収の額がわかれば,養育費・婚姻費用が簡単に割り出せる。」 

 

というものです。論稿の末尾には表(「算定表」)があって,縦軸に支払義務者の年収,横軸に受取権利者の年収が書かれており,その交点の数字が養育費・婚姻費用の月額となるというわけです。 

 

例えば,夫婦いずれも給与所得者で,夫が支払義務者,子が1人(0~14歳)と仮定し,夫の年収が500万円,妻の年収が100万円とすると,養育費の月額は4万円から6万円となります。夫の年収が1千万円,妻が300万円の場合は,月額6万円から8万円。 

 

このように,夫婦の年収(給与所得・自営の別),子の人数・年齢から簡単に養育費・婚姻費用が導かれるのがこの算定表のメリットなわけですが,この算定表方式は,裁判実務で広く受け入れられ完全に定着したものとなっています。年間3万件もの離婚事件を裁かねばならない裁判所において,画一的な処理ができる算定表方式が定着したのは当然といえば当然かもしれませんが,この算定表方式,当然批判もあります。 

 

上記の例で,夫の年収1千万円,妻が300万円の場合は,養育費月額6万円から8万円というのは,額としてちょっと少なすぎるとは思いませんか? 受取権利者(多くの場合は妻)に厳しすぎるのではないかということが一般的に言われています。 

 

また,画一的な処理のために,統計的手法を用いて算定表が作成されていますが,個別的な事情を無視しすぎているのではないかという疑問もあります。この算定表では,子の生活費を計算するにあたって支払義務者の基礎収入と義務者及び子の指数が用いられていますが,子の標準的な生活費の指数は,親を「100」とした場合,0から14歳の子は「55」,15から19歳の子は「90」と一義的に割り切ったものとされています。 

 

さらに,論稿自体発表されたのが10年以上前,基礎とされた統計データはさらにそこから5年程度さかのぼるもので,古すぎるという批判も当然ありうるかと思います。 

 

この算定表方式については,あまりにも画一的すぎるという批判を受けて,最近では,例えば,住宅ローン負担額がある場合それを特別経費として控除するというような運用がされているようです。 

 

とはいっても,家裁の調停委員にうかがうと,「あの算定表がスタンダードだ。」ということなので,相場としてはこの算定表が現時点でもベースなんでしょう。 

 

判例タイムズ1111号は,電子書籍の形であれば現在でも購入できるようです。また,離婚に関する書籍(例えば,ミスター家裁こと秋武憲一『離婚調停』日本加除出版)などでも算定表が引用されておりますので,興味のある方は一読されるとよいかと思います。



                                  (hy

 

 

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