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2012年7月 9日 (月)

1人別枠方式

小沢グループが民主党から離党し,政局も混とんとしている状況ですが,仮に,ごく近い将来衆議院解散・総選挙となった場合,政局の混沌とは別に,憲法上一つの問題が生じえます。議員定数不均衡問題です。

 

議員定数不均衡問題については,最近では,新聞等に大きな意見広告が出ているのを見かけた方が多いと思います。小選挙区の1票の価値の格差が2倍を超えている現状に対し,関心がますます高まってきていると感じます。

 

先週末のある新聞では,

 

「違憲状態解消 早くて年明け」

 

という見出しの特集記事が組まれていました。今から直ちに選挙区割の見直しに着手しても,格差を是正して衆議院議員総選挙が可能となるのは,最短で来年の1月とその記事では報じています。

 

 衆議院議員の議員定数不均衡問題に関しては,

 

 「衆議院議員選挙区画定審議会設置法」

 

という名の法律があります。この審議会が,選挙区割りについて,調査し,改定案を内閣総理大臣に勧告するとされています。その改定案の作成基準について,同法31項は,

 

 「…各選挙区の人口…のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすることを基本とし,…」

 

と規定しています。1票の価値の格差は,2倍以内におさめるべきということですね。

 

 ただし,ここから先が問題で,同条2項には,次のようにも規定されているのです。

 

 「前項の改定案の作成に当たっては,各都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出議員の選挙区の数は,一に,公職選挙法…に規定する衆議院小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とする。」

 

 非常にわかりにくい表現ですが,要は,各都道府県にまずは1人を割り振り,残りの定数を人口比例にするということです。人口比で議席を配分する前にまず無条件に各都道府県に1議席を配分するため,「1人別枠方式」と呼ばれています。

 

 この「1人別枠方式」,過疎対策のために導入されていると説明されることが多いのですが,1人別枠で議席を配分してしまうため,格差是正にはマイナスに働くことになります。そのため批判も強くあります。

 

 古くは,平成111110日最高裁大法廷判決で,5人の裁判官が反対意見の中で「1人別枠方式」を批判しています。直近の衆院選に対する平成23323日大法廷判決においても,田原睦夫裁判官,宮川光治裁判官がそれぞれ「1人別枠方式」を批判しています。

 

 そして,この判決の多数意見でも,「1人別枠方式」の合理性は失われていると指摘されています。ただ,多数意見は,結論的には,

 

 「…本件選挙までの間に…1人別枠方式の廃止及びこれを前提とする本件区割り規定の是正がされなかったことをもって,憲法上要求される合理的期間内に是正がなされなかったものということはできない。」

 

と判示し,法の下の平等には反しないとしています。違憲状態になってから「合理的期間」が経過してはじめて違憲となるという,いわゆる「合理的期間」論です。

 

 しかし,今回,定数是正がなされないまま総選挙が行われた場合,最高裁が上記のような「合理的期間」論を用いて合憲判断をするとは限りません。

 

 さらに,違憲判断をした事例においても,いわゆる「事情判決の法理」によって主文で当該選挙は違法であると宣言するにとどめ,選挙を無効とはしてこなかったわけですが,さらに一歩進んだ判断を示す可能性もないとは言い切れません。

 

 例えば,これは衆議院のケースではなく,参議院のケースですが,平成21930日最高裁大法廷判決で,近藤祟晴裁判官は,反対意見の中で,次のように述べています。ちょっと長くなりますが,引用します。

 

 「なお,明年7月に施行される次回の参議院議員通常選挙までには,…上記のような抜本的な見直しを実現することは困難であろうが,国会においては,4年後に施行される次々回の参議院議員通常選挙までには,憲法の要求する投票価値の平等を他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現するために,参議院議員の選挙制度の抜本的見直しを行うことが,憲法の要請にこたえるものというべきである。次々回の選挙もこのような抜本的な見直しを行うことなく施行されるとすれば,定数配分規定が違憲とされるにとどまらず,前記事情判決の法理によることの是非が検討されることになろう。」

 

 場合によっては,事情判決の法理を超えて,選挙無効の判断が将来なされることもありうるということでしょうか。さすが近藤裁判官,非常に示唆に富んだ反対意見ですね。

 

 

hy

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