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2012年7月17日 (火)

当選無効

新座市の市議会議員選挙で当選した議員に対し,埼玉県選挙管理委員会が,同人の審査申し立てに対して,当選無効の裁決をしたとの報道が本日なされていました。

 

公職選挙法は,「その選挙権を有する者で年齢満二十五年以上のもの」に市町村議会の被選挙権を認めています。そして,選挙権については,

 

「日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者」

 

に,その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を認めていますので,結局,

 

「引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者」

 

というのは,被選挙権の要件にもなるわけなんですね。本件では,問題となった市議は,新座市内で3か月以上住所を有していたとはいえないと判断されたようです。

 

 それでは,法律上「住所」とはいったいどういう場所をいうのでしょうか。

 

 民法には,「各人の生活の本拠をその者の住所とする」という規定があります。

 

 そして,大学の寮が公職選挙法上学生の住所地といえるかが争われた有名な事件で,昭和29年の最高裁判決は,一般論として,

 

 「およそ法令において人の住所につき法律上の効果を規定している場合,反対の解釈をなすべき特段の事由のない限り,その住所とは各人の生活の本拠を指すものと解するを相当とする。」

 

と判示しています。つまり,民法の「生活の本拠」=住所という図式が他の法律においても原則としてあてはまるということです。

 

 そうすると,次に,「生活の本拠」とはいったい何か? ということが次に問題となってきます。

 

 公職選挙法上の住所が問題となった昭和35年の最高裁判決は,

 

 「選挙権の要件としての住所は,その人の生活にもつとも関係の深い一般的生活,全生活の中心をもつてその者の住所と解すべく,所論のように,私生活面の住所,事業活動面の住所,政治活動面の住所等を分利して判断すべきものではない」

 

と述べています。つまり,一人につき住所は1個ということですね。政治活動上の住所はA地,しかし私生活上の住所はB地,などということは認められないということです。

 

 昭和35年といえば50年も前の判決です。移動手段の高速化や通信機器の目覚ましい発達,平日は都会で,週末は田舎で暮らすなど人々の意識の変化なども考えると,最高裁のいう「住所1個論」は疑問があるようにも思います。しかし,公選法上の住所が問題となった平成9年の判決でも,この昭和35年判決を引用しつつ,

 

 「ここにいう住所とは,生活の本拠,すなわち,その者の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を指すものであり,一定の場所がある者の住所であるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべき」

 

と判示しているので,現在でも,「住所=1個」の考え方は変わりないようです。

 

 ところで,今回問題とされた新座市の市議,生活の実態は新座市ではなく,東京都練馬区にあると判断されたと報道されていますが,家族が,「当選までは練馬区で生活していた。」などと証言したことが一つの判断要因とされているようです。

 

 しかし,報道によると,この市議は配偶者と離婚調停中で,配偶者は子の親権を主張しているとのこと。この市議は,子を配偶者に会わせるために新座と練馬の二重生活を選んだようにも報じられています。

 

 この報道内容の真否はわかりませんが,二重生活,公職選挙法上の住所の判断としては,住所はどちらか一つしかないと判断されることになるのでしょう。

 

hy

 

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