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2012年8月10日 (金)

代表と代理

 

 

 ロンドン五輪も佳境に入って,深夜・早朝テレビで観戦して,眠くてしょうがないという方も多いかと思います。

 

 

 

 ニュースは,オリンピック一色という中で,数日前から政局のニュースが五輪のニュースにはさまれるようになりました。消費税増税法案の今国会における成立と衆議院の解散・総選挙に絡む民主・自民・公明の三党合意のニュースです。

 

 

 

 三党合意では,「近いうち国民に信を問う」ことが約束されたと報じられていて,「近いうち」とはいつか,その解釈が話題になっているようです。個人的には,来年の衆議院議員の任期満了まで待って,参議院議員の通常選挙とあわせて衆参同日選挙を行い,少しでも,いわゆる「ねじれ現象」を解消してほしいと考えていますが,それでは,「近いうち」の範疇にはいらないでしょうね。

 

 

 

 さて,その三党合意の効力について,民主党幹事長が,それぞれ9月に党首選を迎える首相と自民党総裁が再選できなければ,白紙になる可能性があるとの認識を示したと,昨日のニュースで報じられていました。

 

 

 

 ある団体の代表者が,団体を代表して他者と約束をした場合,その約束に当該団体は拘束され,それは,仮にその後代表者が変更しても変わらないというのが,社会一般の当然の約束事であると思います。仮に,政党にはそのようなルールが当てはまらないということになると,政党は民主主義的存在であるということはできないし,そもそも,政党が一つの「団体」ですらないということになりかねません。

 

 

 

 ところで,法律上,一般に,ある人が他の人・団体に代わって行為をし,その行為の効果が当該他の人・団体に帰属する制度として,「代理」と「代表」というものがあります。この,「代理」と「代表」いったいどこが違うのでしょうか。

 

 

 

 「代理」も「代表」も,ある人の行為の効果が他者に帰属するという点では共通です。しかし,代理人は代表と異なり,本人に対立する地位に立つのに対し,代表というのは,法人の機関が行為をしたときの問題で,機関が法人と独立した地位を有しない点で代理と異なる,などと説明されることがあります。手元の法律用語辞典ではそのような説明がされていました。

 

 

 

 また,法人については,法人の事業活動全般について,機関に包括的な代表権が認められ,それが「代表」といわれる,と説明しているテキストもありました。

 

 

 

 しかし,法人においても代表者と会社が対立する地位に立つことはあります。だからこそ会社法は,取締役と会社の利益相反取引について規制しているわけです。また,ある個人が代理人に対して包括的な代理権を授与することはありえますし,逆に,会社が代表者の代表権に制限を加えることもあり得ます。会社法には,「代表取締役の権限に加えた制限は,善意の第三者に対抗することができない。」という規定がありますが(会社法3495項),逆にこの規定は,会社内部で代表者の権限に縛りを設けることがありうることを前提としていると思います。

 

 

 

 というわけで,「法人,機関,包括的権限=代表」「個人,個別的権限=代理」という通説的見解は,ちょっと違うのではないかという印象を持っています。

 

 

 

 では,その違いはどこに求められるべきか。民法の条文をちょっと調べてみました。

 

 

 

 民法総則の第五章 法律行為には,「第三節 代理」という項目があるので,当然「代理」という語はたくさん用いられています。検索したら129個ヒットしました。

 

 

 

「代理人」「法定代理人」「特別代理人」「代理行為」「代理の目的」「代理権」

 

 

 

などと使用されています。なお,「代理する」という表現は民法にはありませんでした。

 

 

 

 他方,民法の法人の規定に関しては,「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の成立とともに多くがそちらに移管されましたが,しかし,民法にも「代表」という用語を用いている例はあります。検索すると20件あり,(法人の)「代表者」という用語例もありますが,それ以外の使われ方は,下記の例のとおり,「代表する」というものです。

 

 

 

 「復代理人は,その権限内の行為について,本人を代表する。」(1071項)

 

「親権を行う者は,子の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為についてその子を代表する。」(8241項本文)

 

「後見人は,被後見人の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。」(8591項)

 

 

 

 子も被後見人も「法人」ではなく個人であるにもかかわらず,民法は「代表する」という用語を用いています。これに対しては,

 

 

 

「親権者も後見人もその代理権は包括的であるから『代表』という語を用いているのだ。」

 

 

 

という説明が可能なのかもしれませんが,このロジックでは,「復代理人は,その権限内の行為について,本人を代表する。」とされている1071項を説明できないと思います。

 

 

 

 結局のところ,民法では,

 

 

 

 「名詞で使う場合には『代理』と,動詞で使う場合は『代表する』という使い分けがなされているに過ぎず,両者の意味の違いはない。」

 

 

 

と思われるのですが,暴論にすぎるでしょうか。

 

 

 

 ところで,冒頭のオリンピックの話に戻りますが,連日健闘している各国代表の選手たち,「日本代表」とはいいますが,「日本代理」とはいいません。なぜでしょうか。

 

 

 

 「日本国民という団体を包括的に代表しているから『代表』なのだ。しかも,ここでは『日本代表』と名詞として用いている。だから『代表』と『代理』の違いは通説的見解が正しいのだ。おまえの見解は間違っている。」

 

 

 

 こう言われてしまうと,反論の余地はないのかもしれません。

 

 

 

hy

 

 

 

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