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2012年8月14日 (火)

組長の使用者責任

 先週末の読売新聞の追悼抄に,4月に亡くなられた,暴力団被害者の会会長の堀江ひとみさんの記事が掲載されていました。

 

堀江さんは,暴力団抗争による流れ弾で27年前に娘さんを亡くしています。そして,暴力団組長の使用者責任に基づく損害賠償請求訴訟を提起し,和解金を勝ち取っています。

 

暴力団員の不法行為について,組長の使用者責任を追及するということは,画期的な手法だったと思います。まさに,堀江さんはその先駆けとなったわけです。

 

使用者責任について定める民法715条は,1項本文で次のように規定しています。

 

「ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」

 

暴力団の活動を「事業」ととらえ,組長は組員を使用しているから,組員が暴力団の活動について第三者に損害を加えた場合,組長は715条に基づき使用者責任を負う,というのが,組長の使用者責任についてのロジックとなるわけです。

 

現在では,最高裁も,一般論としては,このような考え方を認めています。例えば,最判H16.11.12は,次のように述べています。

 

「上告人(引用者注:組長のことです。)は,A組の下部組織の構成員をその直接間接の指揮監督の下,A組の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業に従事させていたということができるから,上告人とA組の下部組織の構成員との間には,同事業につき,民法7151項所定の使用者と被用者の関係が成立していたと解するのが相当である。」

 

ただし,一般に,組長と組員との関係は使用者と被用者の関係に該当しうるとしても,話はそれほど単純ではありません。使用者と被用者の関係や事業の内容・被用者の行為が事業に含まれるかなどについては,被害者側が立証しなければならないからです。

 

例えば,これは,組長の使用者責任に関するケースではありませんが,最判H22.3.30は,貸金業者の従業員が顧客から金銭をだまし取った事案に関して,次のように述べています。少し長いですが,引用します。

 

「上告人は貸金業を営む株式会社であって,Aを含む複数の被用者にその職務を分掌させていたことが明らかであるから,本件欺罔行為が上告人の事業の執行についてされたものであるというためには,貸金の原資の調達が使用者である上告人の事業の範囲に属するというだけでなく,これらが客観的,外形的にみて,被用者であるAが担当する職務の範囲に属するものでなければならない。ところが,原審は,貸金の原資を調達することが上告人の事業の範囲に属するということのみから直ちに,これが上告人の被用者の職務の範囲に属するとして,本件欺罔行為が上告人の事業の執行についてされた行為に該当するとしたものであるから,その判断には,民法715条の解釈適用を誤った違法がある。」

 

つまり,被害者としては,上記のケースでいえば,被用者Aが担当する職務の内容,貸金業者(使用者)の資金調達に関するAの職務権限,当該職務とAの欺罔行為(顧客をだました行為)との関連性などについて,立証しなければならないということになります。

 

これは,加害者サイド(使用者・被用者)の内部関係ですから,被害者にとって立証することはなかなか容易なことではないと思います。

 

さて,暴力団組長のケースにもどって考えてみますと,組長の使用者責任を追及する被害者としては,①個々の暴力団内部の組織形態,②意思決定過程,③代表者等による内部統制の状況,④上納金の徴収システム,などを具体的に主張・立証する必要があると一般的には説かれているようです。しかし,たとえ,警察の支援があったとしても,相当ハードルが高いと言わざるを得ないでしょう。

 

そこで,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律が平成20年に改正され,威力利用資金獲得行為に係る指定暴力団の代表者等の損害賠償責任に関する規定が整備され,一定の場合において,賠償責任の追及が容易になりました(同法31条の2)。被害者側としては,(1)当該不法行為が被告が代表者等である指定暴力団の指定暴力団員によって行われたこと,(2)当該不法行為が威力利用資金獲得行為を行うにつき行われたものであること,(3)当該損害が当該不法行為により生じたものであること,を立証すれば足りることになります。

 

 

hy

 

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