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2012年8月20日 (月)

軽犯罪法

 

ロンドン五輪のメダリストのパレードが本日11時から銀座で行われるというので,ちょっと事務所を抜け出して見てこようかなんて安易に考えていました。結局行きませんでしたが,ネットにアップされたパレードの写真を見てびっくり。銀座通りの歩道が,身動きできないほどの人・人・人で埋まっています。この暑さの中,見に行っていたら,疲れてしまって,午後は仕事にならなかったでしょう。

 

 

 

さて,本日午後のニュースで,尖閣諸島・魚釣島に上陸した東京都議らに対して,沖縄県警が軽犯罪法違反の疑いで事情聴取をしたとの報道がなされていました。

 

 

 

ニュースではそれ以上細かい点には触れられていませんでしたが,おそらく,軽犯罪法132号の以下の条文が問題になったのだと思われます。

 

 

 

「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」

 

 

 

軽犯罪法には,各種の違反行為の類型が列挙されていて,それに該当する者は拘留又は科料に処せられると規定されています。拘留も科料も刑罰ではありますが,拘留は1日以上30日未満の刑事施設拘置,科料は1000円以上1万円未満ですので,一言でいえば,軽微な犯罪をまとめて規定したのが軽犯罪法ということになるかと思います。

 

 

 

この軽犯罪法違反の行為類型を見ると,例えば,

 

 

 

「こじきをし,又はこじきをさせた者」

 

 

 

「相当の注意をしないで,他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ,注ぎ,又は発射した者」

 

 

 

「公務員の制止をきかずに,人声,楽器,ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」

 

 

 

「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり,ももその他身体の一部をみだりに露出した者」

 

 

 

などと規定されており,本当に刑罰をもって規制する必要がある行為なのか疑問があるものもありますが,この軽犯罪法,沿革的には,戦前の警察犯処罰令の流れを汲んでいるもののようです。

 

 

 

 一般に,公共の安全と秩序を維持するために課せられた義務に違反する行為であって,一般統治権に基づく刑罰の制裁が科せられるものを警察犯と呼ぶようですが,戦前には警察犯処罰令というものがあって,一定の軽微な警察犯について,裁判官ではなく,警察署長が略式の手続で即決できることとされていたようです。

 

 

 

 この警察犯処罰令は,昭和23年の軽犯罪法施行により廃止されましたが,軽犯罪法施行直後に出された東京高裁昭和24729日判決では,両者の関係を次のように述べています。

 

 

 

 「軽犯罪法はその規定の形式においては警察犯処罰令に似たところがあるけれども,その官僚主義的な精神を踏襲したものではなく,寧ろ日本國民の社会生活を文化的に向上せしめる爲最低限度に要請せられる道徳律を実体刑法化したものである。」

 

 

 

 軽犯罪法は,すべて司法手続で処理されるが,なおその内容には道徳的色彩が残っている,といったところでしょうか。

 

 

 

 さて,今回の尖閣諸島上陸のケースですが,報道によると,尖閣諸島は私人が所有していて,国が賃借しているとのことです。ちなみに,報道では,沖縄県警は今回立件を見送る方針とのことなので,あくまで仮定での話になりますが,国が上陸を許可していないのであれば,魚釣島は,軽犯罪法132号にいう

 

 

 

 「入ることを禁じた場所」

 

 

 

に該当することになるでしょう。あとは,

 

 

 

 「正当な理由がなくて入つた者」

 

 

 

に該当するか否かが問題となります。「正当な理由」とは何か,具体的には法律に明記されていないので,解釈論になります。仮に,「日本国の領土を守るために上陸した。」との弁解がなされた場合,「正当な理由」に該当することになるのでしょうか。

 

 

 

領土問題などといった外交・国防の重要事項を「正当な理由」の法解釈論に還元することは,軽犯罪法にとって,あまりにも重荷であるといわざるを得ないでしょう。

 

 

 

hy

 

 

 

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