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2012年9月15日 (土)

海上保安官の捜査権

 尖閣諸島のうちの三島が国有化されたことに伴い,中国各地では大規模な抗議デモが発生しているとのニュースがとりわけここ数日報じられています。

 

そのような状況の中で,先月末に成立した改正海上保安庁法が今月末に施行されます。

 

この改正法,改正の理由は,

 

「我が国周辺海域における情勢の変化等に対応して,海上保安官等が一定の離島における犯罪に対処できることとする…」

 

とされています。

 

海上保安官(及び海上保安官補)にも,法律によって犯罪の捜査権限が与えられているわけですが,まずは,一般に,捜査機関にはどのようなものがあるか,整理してみます。

 

刑事訴訟法によると,捜査機関には,司法警察職員,検察官,検察事務官があると規定されています。「司法警察職員」というのは,官職名ではなく,捜査をするについての法律上の資格のことです。

 

この司法警察職員は,さらに,一般司法警察職員と特別司法警察職員に分かれます。

 

一般司法警察職員というのは,警察庁及び都道府県警察の警察官の総称です。「おまわりさん」のことですね。

 

他方で,特別司法警察職員というのは,特別の事項について捜査の職務を行う行政庁の職員のことです。例えば,麻薬取締官とか,皇宮護衛官とかがこれにあたります。海上保安官も特別司法警察職員です。

 

特別司法警察職員の捜査権は,各々の法律で定められた特別の事項に限定されています。

 

そこで,冒頭の海上保安庁法の改正という話につながるわけです。

現行の海上保安庁法では,海上保安官の捜査権の範囲として,

 

「海上保安官及び海上保安官補は,海上における犯罪について,海上保安庁長官の定めるところにより,刑事訴訟法の規定による司法警察職員として職務を行う。」

 

と定められています。つまり,職務の範囲は,「海上における犯罪」に限定されています。例えば,海上で,覚せい剤所持の現行犯逮捕をすることはできますが,その覚せい剤を陸上で譲渡したとの被疑事実について譲渡人を逮捕したりすることはできないことになります。

 

 そうすると,離島に不法上陸した外国人活動家を発見したり,上陸後に灯台などの島の施設を壊されたりした場合を現認しても,海上保安官は捜査できないことにもなります。しかし,その場合に,一般司法警察職員である警察官を現場に呼んでいるうちに,外国人活動家はサッサと逃げてしまいますから,海上保安官は何もできず彼らが帰るのを見ているだけだと。

 

 そのようなことになっては困りますので,今回の改正法で,次のように改められました。

 

 「海上保安官及び海上保安官補は,本土から遠隔の地にあることその他の理由により警察官が速やかに犯罪に対処することが困難であるものとして海上保安庁長官及び警察庁長官が告示する離島において,海上保安庁長官が警察庁長官に協議して定めるところにより,当該離島における犯罪に対処することができる。」

 

 すべての離島において海上保安官が捜査権を有するわけではなく,告示によって示された特定の離島においてだけ捜査権を有することになるということですね。

 

 さて,この告示において,今回国有化された魚釣島,北小島,南小島の三島は海上保安官が捜査権を有する離島として指定されるのでしょうか。あるいは,戦前から現在まで一貫して国有地である尖閣諸島の大正島はどうでしょうか。あるいは沖ノ鳥島や,竹島,北方四島はどうでしょうか。もしかしたら,どの島を指定するか否かで,政治問題化するかもしれませんね。

hy

 

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