無料ブログはココログ

« 割り水について | トップページ | 新家事事件手続法と離婚調停の運用の変更 »

2012年11月11日 (日)

行政処分の成立

  文部科学大臣がある三大学の設置(新設)を不認可とし,その後一転して認可を行った問題についてのニュースで,この一週間はもちきりでした。

 

  当初は,不認可とされた三大学の関係者は,「不認可の撤回を求める。撤回がなされなければ,法的処置も辞さない。」というスタンスをとっていると報じられていました。

 

  大学の設置は文部科学大臣の認可を受けなければならないと学校教育法で規定されています。行政処分について行政手続法という通則がありますが,大学の設置の不認可は,同法24号ロの「申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分」にあたるように思われます。従って行政手続法上の「不利益処分」にあたらず,同法の適用はないのではないか。

 

  公権力の行使一般について不服申立て手続きを定める法律として,行政不服審査法がありますが,学校教育法139条は,「文部科学大臣がした大学又は高等専門学校の設置の認可に関する処分については,行政不服審査法による不服申立てをすることができない。」と規定されているので,同法の適用もないことになります。

 

  そうすると,大学設置不認可に対する法的措置とは,行政訴訟ということになりそうです。具体的には,行政庁の処分の取消しを求める処分の取消しの訴えかと。

 

  ところで,大学設置についての文部科学大臣の「認可」ですが,これが,いわゆる講学上の「認可」(法律上の行為が公の機関の同意を得なければ有効に成立することができない場合に,その効力を完成させるために公の機関が与える同意)なのか「許可」(一定の行為に対する一般的禁止の特定の場合の解除)なのか,判然としないようにも思いますが,仮に文字どおり前者だとしても,「認可」が得られない以上,大学の設置はできないわけなので,「不認可」という処分が取消されるだけでは,原告の目的が達成されないことになります。訴訟で「認可」を得るためには,義務付け訴訟ということになりそうですが,本件のようなケースで,義務付け訴訟が提起できるのかについては,正直言ってよくわかりません。

 

  文部科学大臣が大学設置の認可を与えるか否かについては,大臣に一定の裁量があるのだと考えられます。この点,学校教育法95条は,「大学の設置の認可を行う場合…には,文部科学大臣は,審議会等で政令で定めるものに諮問しなければならない。」と規定し,大学設置・学校法人審議会が設けられています。これは,大学設置の判断に行政機関の恣意性が入り込まないようにするための手当だと考えられます。さらに,文部科学省のホームページを見ると,「ピア・レビュー」,すなわち,審査が当該審査対象について専門的・技術的な共通の知識を有する同業者・同僚(「ピア」)によって行われることを指す用語についての説明がなされるともに,審議会の委員は,大学の学長,教員,学校法人などが中心であり,大学の設置審査においては,大学関係者のピア・レビューを中心とすることが欠かせないことが強調されています(ピア・レビューについては,文部科学大臣は異論があるような報道がなされていました。)。

 

  しかし,大学設置・学校法人審議会は,国家行政組織法8条の審議会等にすぎず,諮問機関ですから,諮問を受けて,答申を大臣に返しますが,あくまで最終的な判断は大臣にゆだねられるので,大臣の判断には裁量があるということだと思います。取消し訴訟では,原告は,裁量の濫用又は逸脱を立証する必要があることになりますが,原告としては,学問の自由や大学の自治の観点から,審議会への諮問やピア・レビューがとられ,行政の恣意性を排除しているのだから,大臣の裁量の範囲は相当程度限定されているのだ,などとの立論を展開するのかな,などと考えておりました。

 

  ところが,不認可から一転して「認可」されたと報じられたので,行政訴訟を提起する必要はなくなりました。法律的に言えば,不認可処分は撤回されたのか,職権取消しされたのかということになるのかなぁなどと思っておりました。

 

  しかし,報道をよくよく読むと,「不認可という行政処分は行っていない。」というのが,文部科学大臣の発言とのこと。では,三大学について不認可とする発言したあの記者会見はいったいなんだったのか。一般に,行政処分の成立要件は,行政処分が対外的に表示されることであり,行政処分が相手方に到達することによって処分の効力が発生する,と説かれています。

 

  あの記者会見では大臣の意見が表明されたが,あのときに行政処分を対外的に表示したわけではない,あるいは行政処分が三大学に到達していないということなのでしょうか。記者会見を真に受けて,「処分の撤回を求める。法的措置も辞さない。」と三大学は反発しましたが,不認可という行政処分が存在しないのであれば,その撤回もあり得ないし,行政訴訟で取り消しを求める対象も存在しないことになり,三大学の反発は,いったいなんだったんだということになります。

 

  さすが文部科学省の官僚,「不認可という行政処分は行っていない。」というロジックで落としどころを探ってくるなんて,脱帽ですね。

 

 

hy

« 割り水について | トップページ | 新家事事件手続法と離婚調停の運用の変更 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事