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2012年11月 3日 (土)

割り水について

  めっきり冷え込んできて,お酒がよりおいしい季節になりましたね。もっとも私の場合,四季寒暖を問わず,常においしく飲んでいますが。

 

  さて,焼酎の飲み方として,割り水というものがありますね。正式なやり方は知りませんが,焼酎と水を甕などに入れ,一定期間寝かせたあとで供するというものです。角が取れ,まろやかな味になるとか。

 

  この「割り水」ですが,興味があってずいぶん前に調べた時は,確か酒税法に抵触するおそれがあるのではないかなどと考えていました。その後手当がなされ,酒税法上問題がなくなったという話もどこかで耳にしました。今日は,それを簡単に調べてみようかと思います。

 

  酒税法7条は,酒類を製造しようとする者は,酒類の品目別に所轄税務署長の免許を受けなければならない旨を定めています。「酒類」の定義は2条に規定され,アルコール分1度以上の飲料をいうとされています。そして,清酒とか連続式蒸留しようちゆう,単式蒸留しようちゆう,ウイスキーやビールなどが酒類の「品目」として列挙されています。

 

  焼酎を水で割る行為は,別に酒類とされる焼酎を製造しているわけではないので,酒税法は関係ないのかなとも思いますが,酒税法には7条とは別に「みなし製造」という規定があります。

 

  酒税法43条1項は,酒類に水以外の物品を混和した場合において,混和後のものが酒類であるときは,新たに酒類を製造したものとみなす旨を規定しています。「混和」とは,解釈通達によれば,酒類に他物を投入することにより,酒質に変化を招来させる行為をいい,酒類に木片を投入し成分を抽出させる行為は混和になるが,酒樽の成分が自然に抽出した場合や金箔などの成分の抽出がないものの投入は混和とならないと説明されています。

 

  いずれにしても,43条1項は,「酒類に水以外の物品を混和した場合」の規定なので,焼酎を水で割っても,この規定の適用はないわけです。

 

  では,何が問題なのかというと,酒税法43条5項というのがあって,同項第1文は次のように規定しています。

 

  「第一項の規定にかかわらず,酒類の製造場以外の場所で酒類と水との混和をしたとき(政令で定める場合を除く。)は,新たに酒類を製造したものとみなす。」

 

  焼酎の製造工場以外の場所で焼酎を水で割ったら製造とみなされる,と書いてあります。「みなされる」というのは,法律の世界では「イコール」という意味ですから,製造工場以外の場所で焼酎を水で割ったら酒類の製造となり,酒類の製造免許を持っていないと,酒税法違反となるということです。

 

  この規定には,「政令で定める場合を除く。」とカッコ書きがあります。政令で定める場合の一例としては,蒸留酒類と水と混和をしてアルコール分が20度以上の場合が挙げられています。ウーン,微妙ですね。焼酎のアルコール分って,25度から35度くらいのものが多いのではないでしょうか。割り水の仕方も人それぞれ好き好きでしょうが,5対5とか6対4とかが多いでしょうか。そうすると20度を割ってしまい,政令の適用はないことになります。

 

  そうすると,バーで水割りを作ってもらう場合も,自宅で自分で水割りを作る場合も製造免許が必要とされることになってしまいます。これはやはりおかしいので,この点については,ちゃんと逃げ道があります。

 

  まず,酒税法43条10項は,「前各項の規定は,消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては,適用しない。」と規定しています。そして,政令では,酒場,料理店などで消費者の求めに応じ混和をする場合を定めています。従って,バーで水割りを作ってもらう場合は,バーテンが製造免許を持っていなくてもOKとなります。

 

  また,酒税法43条11項は酒類の消費者が自宅で自ら消費するために酒類と他の物品との混和をする場合も前各項は適用ないとしています。従って,自宅で自ら水割りを作る場合もOKとなります。

 

  ところが,飲食店で焼酎の割り水を提供する場合は,酒税法43条10項の適用はないことにないんですね。同項は「消費の直前において」混和する場合を規定していて,割り水のように,甕の中で焼酎をある程度の期間ねかせておく場合は,「消費の直前において」混和していないからです。

 

  そこで,冒頭の話に戻ります。飲食店で焼酎の割り水を供することは,かつては酒税法違反だったことになります。この点は,飲食店業界などからずいぶん不満が寄せられたようで,平成20年に「特例適用混和」という制度が新設されることで解決されました。具体的には,租税特別措置法87条の8という規定が設けられ,酒税法43条1項から9項までの規定は,政令で定めるところにより,酒場,料理店等で蒸留酒類と他の物品を混和する場合については適用しない旨が定められたのです。「政令で定めるところにより」とは,具体的には,「特例適用混和の開始申告書」を混和開始の前日までに所轄税務署長に提出することを指します。

 

  というわけで,申告をしておけば,割り水を飲食店で供することは適法という結論になりました。ただし,特例適用混和の制度は,総量が年間1キロリットルに限るとか,テイクアウトはダメとか,制約があります。

 

  もちろん,自宅で自己消費する場合には,こんな申告や制約はありません。酒税法43条11項は,「消費の直前において」などという要件はつけられていませんので。どんどん割り水を作って,どんどん飲んでください。幸せですね。 

hy


 

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