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2012年11月30日 (金)

顔認識カメラ映像と個人情報保護法

  先週日曜日,第32回江東シーサイドマラソンが開催されました。天気が良くて気持ちよかったですね。私の記録はというと,…。

 

  さて,今週の新聞に,「「顔認識」無断で客撮影」という見出しの記事が掲載されていました。内容は,大型商業施設において,店舗案内を流しているディスプレーの上部にカメラが設置されており,客の顔を撮影し,撮影した顔の映像から顔認証機能により,客の性別と年代を推測し,どの広告をどの性別・年代の客が見たかを分析しているというものでした。

 

  顔認識方式のカメラというのは,コンパクトデジタルカメラなどでも普及していますよね。デジカメで操作してみると,ぬいぐるみとかだと反応しませんけど,リカちゃん人形とかだと反応したり,紙に書いたアニメだと反応しなかったりなど,なかなか面白いです。

 

  新聞記事では,顔認識方式カメラで客を無断撮影することが,個人情報保護法との関係で問題にならないのかということが解説されていました。商業施設側は,録画しておらず性別・年代だけの情報に変えており,問題はない。」という認識のようです。

 

  個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)は,平成15年に施行されました。同法は,個人情報データベース等を事業に供する者を「個人情報取扱事業者」と定義し,利用目的の本人への通知や個人情報の適切な取得に係る規定を整備していますが,法律の内容について,少なくとも施行当初は,一般の方にやや誤解されていたような気がします。例えば,全ての事業者が対象となるわけではなく,個人情報によって識別される個人の数の合計が過去6月以内のいずれの日においても5000を超えない事業者は,「個人情報取扱事業者」には該当しません。

 

  個人情報保護法は,「個人情報」を次のように定義しています。

 

 「この法律において,「個人情報」とは,生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。」

 

  つまり「特定の個人を識別」できる「個人に関する情報」か否かが,「個人情報」の決め手とされています。

そこで,カメラで撮影された顔写真が「個人情報」となるかというと,顔写真で特定の個人は識別できますから,顔写真は「個人情報」ということになると思います。この点,「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」によれば,「個人に関する情報」は,氏名,性別,生年月日等個人を識別する情報に限られず,個人の身体,財産,職種,肩書等の属性に関して,事実,判断,評価を表すすべての情報であり,評価情報,公刊物等によって公にされている情報や,映像,音声による情報も含まれる,とされています。

 

  「個人情報取扱事業者」が「個人情報」を取得した場合,あらかじめ利用目的を公表している場合を除き,速やかに,利用目的を本人に通知又は公表しなければならないというのが個人情報保護法の定めるルールです。

しかし,冒頭の新聞記事の商業施設は,顔認識方式のカメラで客を無断で撮影しても個人情報保護法違反とはならないと主張しているようです。

 

  これは,どういうことかというと,おそらく,顔認識方式のカメラで客を顔を撮影はするが,その顔を映像として記録するわけではなく,直ちに,「20代女性,○時×分来店」などという形の情報に置き換えて記録しているので,「個人情報」を「取得」しているわけではないのだ,ということだろうと推測されます。年代や性別に係る情報は,個人を特定することが可能な一要素ですが,それだけでは個人を識別することはできない,顔写真と併せてみれば個人を識別できるが,顔写真は映像として記録・録画していないので,本人に無断で個人を識別できる情報を取得しているわけではなく,個人情報保護法に違反しない,というロジックかと思います。

 

  個人情報保護法の条文の法解釈ということであれば,おそらく,上記の考え方は正しいのでしょう。しかし,客の側としては,店舗案内を表示するディスプレーをのぞきこんで目当ての店を探そうとしたら,知らない間にカメラで撮影されており,それが性別と年代の情報に置き換えられて,顧客属性情報として商業施設と広告主に提供されているというのは,ちょっとうす気味悪い気がしますね。

 

  実際,諸外国では,顔認識方式のカメラによる顧客分析等について,リールの整備が進んでいると,冒頭で紹介した新聞記事は解説しています。日本でも,今後,議論が進展するかもしれませんね。

 

  もうひとつ,日本の個人情報保護法制で問題なのは,個人情報の保護や個人のプライバシーそれ自体を所管する官庁がないという点です。

上記で,「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」の一内容を紹介しましたが,これは経済産業省の告示で,その冒頭では,「経済産業大臣が主務大臣に指定された特定の分野における事業者等が行う個人情報の適正な取扱いの確保に関する活動を支援する具体的な指針として定めるものである,と当該ガイドラインの適用範囲が示されています。

各省庁がそれぞれ,所管する分野における事業者向けのガイドラインをこのように制定していて,例えば,「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」(金融庁),「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン(総務省),農林水産分野における個人情報保護に関するガイドライン(農水省),国土交通省所管分野における個人情報保護に関するガイドライン(国交省),などなど,20以上のガイドラインが定められています。

これぞ,縦割り行政の見本ですね。こういった点も,今後議論の対象となってゆくと思います。

hy

 

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