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2012年12月 8日 (土)

憲法の変遷と憲法解釈の変更

  衆院選が公示され,麹町の我が事務所周辺でも,選挙カーによる候補者名の連呼でかまびすしい状況となってまいりました。

 

  国政選挙の度に,選挙制度研究会から,『衆議院選挙の手引』『参議院選挙の手引』という本が出版されますが,これがなかなか面白い。選挙運動には旗やのぼりは使用できるが,吹き流しはダメとか,旗・のぼりの大きさは旗竿を含むとか,選挙って,ずいぶん細かいルールがあるんだなぁと思います。

 

  さて,今回の選挙にあたり,自民党は,政府の憲法解釈を変更し,集団的自衛権の行使を可能とする公約を掲げたという報道がなされておりました。

  そこで,自民党の政権公約(pdf版)を見ると,「日本の平和と地域の安定を守るため,集団的自衛権の行使を可能とし,「国家安全保障基本法」を制定します。」と記載されています。

  他方で,「憲法改正により自衛隊を国防軍として位置づけます。」との記載も見られます。国防軍に関しては「憲法改正」と明記してあるのに対して,集団的自衛権の箇所には「憲法改正により」とは書かれていませんので,報道されているとおり,憲法を改正せずとも現憲法の下で集団的自衛権の行使が可能という解釈をとるのだろうということが推測できます。

 

  ところで,憲法の解釈の変更と似て非なる概念として,憲法の変遷というものがあります。解釈の変更というのは理解できますが,憲法の変遷というのは非常に理解が難しい。憲法の本のはじめの方に出てきますが,他の法領域においてはこのような概念は出てこないと思います。定義も論者によっていろいろで,「憲法の条文はそのままにその意味内容が改正されたと同じほど実質的に変化すること」とか,「憲法条項に違反する実例が長期にわたり繰り返され,当該条項が改廃された結果になること」とかいわれています。

  このような憲法の変遷論は,事実が法を破ることを正面から認めるように思われて,今一つ議論についていけないのですが,抽象的に憲法変遷を議論している背後には,「9条と自衛隊の関係」という生々しい存在があるのでしょう。両者の乖離があまりに激しいところ,何とかして法理論上整合性をもたせたいということでしょうか。

 

  上記のような憲法変遷とは異なり,憲法の解釈の変更は,憲法の意味内容を憲法制定時における憲法規定の意味理解を基軸として固定的に捉えるという見解に立たない限り,実際上も理論上もありうることかと思います。

 

  現に,憲法9条の政府の見解も,戦後一貫して貫かれているものではありません。自衛権との関係でいえば,現在の政府の公式的見解は,91項は「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうること」を認めており,92項もその手段として最小限度の実力保持を禁止していない,とまとめられるかと思います。これは,91項が「国際紛争を解決する手段として」戦争などを放棄することを規定していることや,1928年の不戦条約(「戦争抛棄ニ関スル条約」)の文言などから,独立国によって不可欠の自衛権や,自衛的な武力行使は9条によって放棄されていないという立場に与しているものと考えられます。不戦条約1条は,「国際紛争解決ノ為戦争ニ訴フルコトヲ非トシ,且其ノ相互関係ニ於テ国家ノ政策ノ手段トシテノ戦争ヲ抛棄スル」と規定し,戦争の中で侵略戦争と国策戦争を禁止し,自衛戦争は禁止していないのです。

 

  ところで,「自衛権」とは,伝統的には,個別的自衛権,つまり独立国家がそれぞれ有している自衛権を指していましたが,のちに,「集団的自衛権」という概念が登場しました。これは,自国の軍事的安全保障にあたって,他国又は国際機構とともに自衛にあたる国家の権利をいいます。国際連合憲章51条第1文は,次のように規定しています。

 

  「この憲章のいかなる規定も,国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には,安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間,個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」

 

  また,日米安全保障条約の前文は,「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し…」と規定しています。

 

  そこで,集団的自衛権が憲法上認められるかが問題になるわけですが,政府の公式的見解は,我が国は,主権国家として当然に集団的自衛権を有するとしつつ,その行使は憲法の許容する自衛権の範囲を超えるもので認められない,という立場をとっています。

 

  この解釈を受けて,例えば,周辺事態法(「周辺事態に対して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」)では,日本政府がアメリカ合衆国軍に対して行う支援は戦闘行為が行われることがない後方地域に限定し,支援の内容も武器の提供は含まないとするなどの建付けがとられています。

 

  しかし,集団的自衛権の行使が違憲という政府見解によれば,日米安全保障条約も違憲ということになりますよね。憲法は条約に優位しますので。それに,そもそも,個別的自衛権と集団的自衛権を分けて,前者は合憲,後者は違憲とする論拠がよくわかりません。9条の解釈からそのような区別が合理的に導かれるのでしょうか。政治的配慮が当然働いているのでしょうが,少なくとも純粋に解釈論としてのみとらえた場合,集団的自衛権に関する政府の見解は,詰めが甘いようにも思われます。

 

  自民党は,今回掲げた政権公約で,集団的自衛権の行使を可能とするといっています。仮に自民党が選挙で勝った場合,どうなるのでしょうか。政治的イシューとしてはもちろん,いままで見解を堅持してきた,あの「内閣の法律顧問」たる内閣法制局が解釈の変更に応じるのか,法解釈論的にも非常に興味があります。

http://yamato-law-accounting.com/

hy

 

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