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2012年12月28日 (金)

10円盗んで懲役1年

  一昨日,「寺の賽銭10円盗んで懲役1年の判決」というニュースが流れていました。高野山金剛峰寺のお地蔵さんの前に供えられた賽銭を10円盗んだ被告人に対する控訴審判決が大阪高裁であり,懲役1年の実刑判決が下されたとのことでした。

 

  判決文を読んでいませんので背景事情はわかりませんが,10円で1年の実刑とは厳しい判決ですね。

 

  とくに軽微な違法行為は犯罪とするにあたらないという可罰的違法性の理論というものが刑法にはありますが,この理論について,必ずテキストで触れられる「一厘事件」という有名な判例があります。これは,明治43年の判決ですが,たばこの耕作者が当時の煙草専売法に違反して政府に納入すべき葉煙草1枚(当時の価値で金一厘に相当。)を自ら消費したという事案で,大審院は無罪判決を言い渡しました。

 

  当時の貨幣価値で「一厘」といっても,全然ピンときませんね。今だと何円(何銭?)くらいなんでしょうか。

 

  時はぐっとくだって,平成61年の「マジックホン事件」というものもあります。これは,被告人がマジックホンと称する電話機器を買い,その性能を試すために加入電話の回線に取り付けて1回だけ通話を試み,電話料金10円の支払いを免れた行為について,有線電気通信妨害罪,偽計業務妨害罪の適用が問題とされた事件です。第一審の横浜簡裁は,被告人に無罪を言い渡しましたが,高裁は原判決を破棄し,最高裁も高裁の判断を相当としました。

 

  冒頭のお賽銭のケースは,10円とはいえ現金ですからね。10円はもちろん,1円であっても,現金を盗んだのでは,可罰的違法性の理論の適用はないように個人的には思います。窃盗で同理論が問題とされうるのは,スリがティッシュペーパー23枚を盗んだようなケースでしょうか。

 

  ところで,お賽銭泥棒の冒頭のニュースでは,「一般的に少額の窃盗では罰金刑で済む例も多い」と解説されていました。

かつては,窃盗罪には罰金刑はなかったのですが,平成18年の改正で,公務執行妨害罪などとともに罰金刑が導入されたのです。当時の法制審の審議では,日常の買い物の際に,所持金を有しているにもかかわらず万引きしてしまうようなケースをあげ,そのような比較的軽微な窃盗に対応するために罰金刑を導入すると説明されています。

 

  お賽銭泥棒のケースも,被害額は10円と軽微なので,罰金刑相当とも思えますが,ニュースでは触れられていないいろいろな事情があるのでしょう。判決文を読んでみたいですね。

 

  なお,この被告人,逮捕された当時,カバンの中に2000円余の硬貨を所持しており,賽銭遊びで賽銭をカバンの中に出し入れしていただけで盗んではいない,と一貫して無罪を主張していたとのことです。

 

 

  さて,本ブログの更新も今年最後になります。また,来年もよろしくお願いいたします。  

 

http://yamato-law-accounting.com/

hy

 

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