無料ブログはココログ

« ハーグ条約実施法成立 | トップページ | 主たる債務者兼保証人と消滅時効 »

2013年8月 5日 (月)

内閣法制局の長官人事

先週の新聞で,内閣法制局長官に,内閣法制局の勤務経験のない小松一郎・駐仏大使が起用されることになったとのニュースが報じられていました。山本庸幸現長官は最高裁判事に就任予定とのことでした。


 
この報道には正直びっくりしました。歴代の長官は,内閣法制次長(なぜか,法制「局」次長とは呼ばれません。)がそのまま就任するのが常例だからです。


 
この内閣法制局,一般的にはあまりなじみのない役所かと思います。内閣法制局は,外務省のような「省」ではなく,内閣に設置される官庁であり,主任の大臣はあくまで内閣総理大臣であって,内閣法制局長官は大臣ではありません。


 
しかし,新内閣が組閣されるにあたり,新聞などでは各省大臣の氏名や経歴等が紹介されますが,大臣でもないのに,内閣法制局長官だけは,内閣の一員として紹介されるのです。そして,閣議にも出席します。極めて異例の存在なわけです。


 
この内閣法制局,どのような官庁かというと,一言でいえば,日本国の立法の中枢を担う官庁です。このような表現をすると,たくさんの職印を要しているのだろうという印象を持ちますが,そうではありません。極めて少数精鋭の組織です。


 
内閣法制局は,長官1名,次長1名のもと,四つの部と長官総務室からなり(四部一室体制),各部には部長が,長官総務室には総務主幹がおかれます。そして,各部には参事官が,その下には事務官が置かれます。


 
この参事官の定員ですが,法令上,兼職者を除き,各部を通じ,24名を超えることができないとされています。たったこれだけの数です


 
内閣法制局の仕事は,大きく分けると,閣議に附される法律案,政令案,条例案を審査する審査事務と,法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べる意見事務に分かれます。


 
内閣が国会に提出する法律案は,まずは所管の各省の職員が原案を作成するわけですが,それを担当の参事官のところに持ち込みます。参事官は,あらゆる観点から,持ち込まれた原案を審査します。参事官のハードルが極めて高いということは,原案作成の経験のある各省の職員であれば,誰もが痛切に感じていることでしょう。私も経験がありますが,内閣法制局の審査は完璧であることが求められます。「無謬性」とも言い換えることができるでしょう。


 
では,どのような人がこの参事官となることができるかというと,これもまた異例の人事システムが確立しています。各省庁と異なり,国家公務員採用総合職試験を合格した新卒者が直接内閣法制局参事官に採用されることはありません。参事官は,各省庁からの出向者で占められます。


 
各省庁から出向した参事官は,5年ほど内閣法制局で勤務し,また本省に戻りますが,戻らずにそのまま内閣法制局に残る者もいます。その中から総務主幹が選ばれ,各部の部長となり,次長となり,長官となるというのが昇進の流れです。


 
参事官は少数精鋭で,しかも,各省庁はエース級を送り込むということですので,内閣法制局は超エリート集団ということができます。ここでは説明しませんが,各省庁のいずれもが参事官を送り込めるわけではなく,参事官を送り込める省庁は事実上限定されています。また,全ての参事官が総務主任以降の幹部になれるわけではなく,出身省庁により,幹部になれる参事官とそうでない参事官がいるのです。


 
このように,官庁としての存在自体も,その人事システムも特殊な内閣法制局,その長官人事において,前例を踏襲しないというニュースが報じられたので,びっくりした次第です。


 
報道によると,いわゆる集団的自衛権の解釈の見直しがその背後にあるようです。上で紹介した,内閣法制局の仕事の「意見事務」にかかわる問題です。


 
この集団的自衛権の解釈問題は,以前このブログでも触れたことがあります。

http://bigcircle.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-57cf.html


 
そのブログの末尾で,私は,「…いままで見解を堅持してきた,あの「内閣の法律顧問」たる内閣法制局が解釈の変更に応じるのか,法解釈論的にも非常に興味があります。」と書きました。しかし,まさか,内閣法制局の長官人事に手を付けてくるとは思いませんでした。ニュースで報じられているとおり,新長官が集団的自衛権の解釈見直し派であるとした場合,組織としての「内閣法制局」はどう対応するのでしょうか。これまた,非常に興味がありますね。

                                       
http://yamato-law-accounting.com/

hy

« ハーグ条約実施法成立 | トップページ | 主たる債務者兼保証人と消滅時効 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事