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2013年11月26日 (火)

秘密の定義

特定秘密の保護に関する法律案(以下「特定秘密保護法案」といいます。)が,現在,国会で審議されていることは,みなさんご存知のことと思います。

 本日お昼のニュースによれば,午前の衆議院国家安全保障特別委員会にて,自民,公明,みんな,日本維新の4党修正案が賛成多数で可決されたとのことですので,今後,衆議院本会議に上程されることになります。

 この特定秘密保護法案については,いわゆる国民の知る権利との関係など,さまざまな議論がなされていますが,ここでは秘密の定義という観点を取り上げてみたいと思います。

 秘密とは何か,一般に,秘密には形式秘と実質秘があるといわれています。

 形式秘とは,秘密であると指定されたものが「秘密」であるという考え方です。例えば,「マル秘」と記載された文書の中味は秘密であるとするものです。文書の内容自体を問題とするのではなく形式的に秘密を定義するということですね。

 他方,実質秘というのは,その内容を実質的に見て,秘密として保護に値すると認められるものを「秘密」とするというものです。現行の国家公務員法100条1項は「職員は,職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」と規定していますが,最高裁(外務省秘密漏えい事件判決)は,「100条1項にいう秘密とは,非公知の事実であつて,実質的にもそれを秘密として保護に値すると認められるものをい」う,としています。

 それでは,特定秘密保護法案にいう「特定秘密」とはどういうものでしょうか。同法案の骨子は,行政機関の長が特定秘密を指定するという点にありますので,「特定秘密」=形式秘と思われがちです。
 この点,法案の3条を見てみると,

 行政機関の長は,所掌事務に係る別表に掲げる事項(防衛,外交,特定有害活動,テロの4項目が挙げられています。)に関する情報であって,公になっていないもののうち,その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要であるものを特定秘密として指定するものとする,

と書かれています。ここでは,単に指定があっただけでは特定秘密の要件は満たさず,4項目に関するもので特に秘匿必要のあるもの=「特定秘密」という建付けがとられているので,形式秘ではなく,実質秘ということになるかと思います。
 秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議が平成23年8月にまとめた「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」においても,「実質秘であることを前提に,要式行為たる指定行為により保全対象たる秘密の外縁を明確化し,その範囲で厳格な管理を行うことが適当である。」と記されています。

 そうすると,特定秘密として特定されたものが,実質的に見て本当に特定秘密なのか,という点は,国民一般はどのように知りうるのでしょうか。

 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)5条3号は,

 「公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」

を不開示情報としています。「特定秘密」はこれに該当すると思われます。
 また,そもそも,何が「特定秘密」に指定されているのか一般国民には分かりませんので,情報公開法は使えないでしょうね。

 
そう考えると,一番端的な方法は,特定秘密を取扱い者が特定秘密を漏えいした場合には現行の国家公務員法より重い刑事罰が科されますが,その刑事手続の中で,当該漏えいされた情報が「我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要であるもの」か否かを争うのが,最も実践的な方法となるでしょう。「特定秘密」に該当しないと裁判所が判断したら無罪となりますので(もっとも,国家公務員法上の秘密漏えい罪成立の可能性は残ります。)。

 しかし,刑事罰を科されるリスクを引き受けないと特定秘密該当性について司法判断が下されないというのは問題でしょう。

 上述の有識者会議は,次のように述べています。

 「本法制は,その趣旨に従って運用されれば,国民の知る権利との関係で問題を生じたり,取材の自由を不当に制限したりするものではないと考えられる。しかしながら,ひとたびその運用を誤れば,国民の重要な権利利益を侵害するおそれがないとは言えないことから,国民主権の理念の下,政府においてはその趣旨に従った運用を徹底することが求められ,また,国民においてはその運用を注視していくことが求められる制度であることは,特に強調しておきたい。」

 政府の運用を監視する第三者機関の設置というのは最低限必要になると思います。上述の衆議院特別委員会でも,首相は第三者機関の設置に前向きな答弁をしたとも報じられておりますが,果たしてどうなるでしょうか。

http://yamato-law-accounting.com/

hy


 

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