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2014年10月 7日 (火)

適用が極めて珍しい犯罪構成要件

イスラム過激派組織「イスラム国」に外国人戦闘員として加わろうとした学生の関係先を警視庁が捜索したとのニュースが本日報道されていました。

 

容疑は,「私戦予備」罪。適用されることがめったにない刑法の規定で,私戦予備という犯罪が存在することすら,一般的にはほとんど知られていないでしょう。

 

刑法は,「第4章 国交に関する罪」のなかで,外国国章損壊罪(第92条),私戦予備及び陰謀罪(第93条),局外中立命令違反罪(第94条)の三つの犯罪類型を設けています。

 

これらの規定は,いずれも,外国の利益を保護している規定のようにも思われますが,なぜ,日本の刑法の規定が外国の利益を保護しているのかという疑問もあり得るところです。
そこで,外国の利益そのものを保護しているのではなく,これらの行為は,日本と外国との関係を危うくするものであるから,これらの規定は,日本国の外交作用の安全・円滑を保護していると解する考え方もあるようです。

 

それでは,どのような場合に,私戦予備・陰謀罪が成立するのか,条文をそのまま引用してみます。

 

第93条 外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、三月以上五年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。

 

つまり,私戦予備・陰謀罪は,外国に対する私的な戦闘の準備段階の行為を処罰するものです。
 「戦闘行為をする目的」が必要とされますが,「戦闘」とは,外国に対する組織的な武力行使であることが必要と解されており,それが,日本国の国家意思に基づかない場合が,処罰の対象とされています。

 

報道では,学生は,「イスラム国」の戦闘員になる目的で,シリアへの渡航を計画するなど戦闘行為の準備をした疑いがもたれているようです。

 

ところで,この私戦予備・陰謀罪,めったに適用されないという点のほかにも,他の刑罰規定に比べて,二つの特徴があります。

 

一つ目は,自首をした場合,必ず刑が免除されるという点です。

 

自首,つまり,罪を犯した者が,捜査機関に発覚する前に犯罪事実を申告した場合,一般的には,刑の減軽事由(任意的減軽事由)となりますが,必ず減刑されるわけではありません。また,減刑されうるだけで,免除はされません。

それに対して,私戦予備・陰謀罪は,自首が必要的免除事由とされています。このような犯罪類型は,内乱予備陰謀罪や内乱幇助罪などに限られています。

 

二つ目の特色は,私戦予備・陰謀罪は,準備段階の行為を処罰するだけで,戦闘の実行そのものを処罰する規定が置かれていない点です。

 

例えば,殺人の場合,殺人目的でその予備行為をした場合には殺人予備罪が成立し,実際に殺人行為に着手したが未遂に終わった場合には殺人未遂罪となり,被害者が死亡した場合には殺人(既遂)罪が成立します。

 

しかし,私戦予備・陰謀罪には,私戦未遂罪とか,私戦既遂罪とかいう類型はなく,予備行為だけが犯罪類型として刑法に規定されています。このような犯罪類型は,私戦予備・陰謀罪以外に存在しないのではないかと個人的には思います。立法論としては問題があるでしょう。

 http://yamato-law-accounting.com/ (hy)

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